家事事件のしおり 家事裁判・家事調停を利用される方のために(「家庭裁判所」パンフレットより転載)

家事事件とは?

家庭裁判所では,夫婦,親子,親族,相続等に関するいろいろな問題について,その解決を求めて申し立てられた事件を取り扱っています。これらを家事事件といいます。
家事事件には,審判と調停の二種類がありますが,下記の表のように,審判だけで取り扱われる事件,調停だけで取り扱われる事件があります。

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家事事件は,家庭内の問題を取り扱うものですから,公開の法廷で主張や証拠を出し合ういわゆる訴訟とは違い,審判も調停も非公開で審理され,関係者のプライバシーが固く守られます。また,形式ばらずに,なごやかな雰囲気のなかで,自分の考えを述べることができますので,どなたでも安心してご利用になれます。

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家庭裁判所では,家庭内の問題について,家庭裁判所の事件として扱えることがらか,どこの裁判所にどのような申立てをしたらよいか等の家事手続案内を行っています。

申立てをするにはどうしたらよいですか?

申立てをするには,解決したいことがらや申立てに至る事情等を記載した申立書を提出する必要があります。
家庭裁判所の窓口には,記入しやすい定型の申立書用紙が備え付けてありますので,これを利用することができます。記載の方法が分からないときは,家事手続案内又は受付窓口でお尋ねください。
なお,申立ての際に,戸籍謄本等の書類の提出が必要になりますので,家事手続案内又は受付窓口で確認してください。

申立費用はどれくらいかかるのですか?

申立てには,手数料として,事件により,800円又は1200円の収入印紙を申立書に貼っていただくことになります(下の表参照)。また,通信等のために使用する郵便切手等が必要になりますので,家事手続案内又は受付窓口でお尋ねください。
なお,事件の種類によっては,その他の費用が必要な場合があります。

審判の申立てをした後の手続きはどうなるのですか?

相手方がいる事件では,申立書の写しを相手方に送付するなどの方法で,どのような申立てがされたのかをお知らせします。
また,申し立てた事件にもよりますが,家庭裁判所から,一定の事項について,書面で照会させていただくことがあります。そのような場合には,回答書を正確に記入して必ず返送してください。
そのほか,申立人や関係者が,調査等や審問のために呼び出しを受けることもあります。調査等の期日には,家庭裁判所調査官等が事情を尋ね,審問の期日には,裁判官が直接事情を尋ねます。裁判官は,このようにして得られた資料等を総合的に検討して,申立てについて判断することになります。

調停の申立てをした後の手続きはどうなるのですか?

申立書の写しを相手方に送付するなどの方法で,どのような申立てがされたのかをお知らせします。また,調停では,申立人と相手方の双方に,調停を行う日時,場所等が通知されますので,必ず本人が出席してください。その際,参考となる書面等があれば,持参して説明されるとよいでしょう。調停では,裁判官又は家事調停官と2人以上の家事調停委員で構成される調停委員会が,双方から事情を尋ね,意見を聴き,双方が納得のうえで妥当な解決ができるように努めます。
双方に紛争解決の合意ができると,その内容が調停調書に記載され,調停が成立します。どうしても合意ができないときは,調停不成立となりますが,その場合でも,下の表の2の事件は,自動的に審判手続きに移り,さらに審判が行われて終了することになります。これに対し,下の表の3の事件は,審判に映らず,そのまま調停不成立で終了することになりますが,離婚や離縁,子の認知,親子関係の存否の確認などの人事に関する事件については,家庭裁判所に訴えを提起することにより,訴訟(裁判)によって解決することができます。

家庭裁判所に提出した書類はどのように扱われますか?

申立人や相手方が提出した書類は,家庭裁判所が審判を行うときに,判断の資料とすることがあります。また,家庭裁判所に提出した書類は,お返しすることができませんので,提出する前に,あらかじめコピーを取るなどしてください。
申立人と相手方は,裁判所の許可を得て,他方の当事者が家庭裁判所に提出した書類を見たり,コピーを取ったりすることができます。
書類の提出の方法などについて分からないことがあるときは,申立てをする前であれば家事手続案内又は受付窓口に,申立てをした後であれば,担当の裁判所書記官などにお尋ねください。

万一,調停調書に記載された内容や審判で命じられたことが守られないときはどうしたらよいのですか?

家庭裁判所には,履行勧告の手続があります。この手続は,調停調書に記載された内容や審判で命じられたことが守られないときに家庭裁判所に申し出ると,家庭裁判所が履行の状況を調査して,履行すべき人に任意の履行を促すものです。
また,任意の履行がされない場合には,地方裁判所又は家庭裁判所で,強制的に義務を履行させる手続(民事執行手続)をとることもできます。
詳細は最寄りの裁判所にお問い合わせください。

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主な家事事件とその管轄裁判所一覧表

1 審判だけで取り扱われる事件(申立ての手数料1件800円)

後見開始,補佐開始及び補助開始に関するもの

・・・後見開始の審判等を受ける人の住所地の家庭裁判所

失踪宣告に関するもの

・・・不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所

子の氏の変更に関するもの

・・・子の住所地の家庭裁判所

未成年者の養子縁組に関するもの

・・・養子の住所地の 家庭裁判所

死後離縁に関するもの

・・・申立人の住所地の家庭裁判所

特別養子縁組の成立及びその離縁に関するもの

・・・養親の住所地の家庭裁判所

未成年後見人の選任に関するもの

・・・未成年者の住所地の家庭裁判所

持続の放棄及び限定承認に関するもの

・・・相続開始地(被相続人の住所地)の家庭裁判所

相続人がいない場合における相続財産の管理及び処分に関するもの

・・・同上

遺言に関するもの

・・・同上

任意後見に関するもの

・・・本人(任意後見契約の委任者)の住所地の家庭裁判所

氏又は名の変更に関するもの

・・・申立人の住所地の家庭裁判所

就籍に関するもの

・・・就籍しようとする地の家庭裁判所

扶養義務の設定に関するもの

・・・扶養義務者の住所地の家庭裁判所

2 調停でも審判でも取り扱われる事件(申立ての手数料1件1200円)

夫婦の同居その他の協力扶助に関するもの

・・・申立人又は相手方の住所地の家庭裁判所

子の監護に関するもの

・・・子の住所地の家庭裁判所

離婚の場合における財産分与に関するもの

・・・申立人又は相手方の住所地の家庭裁判所

親権者の指定又は変更に関するもの

・・・子の住所地の家庭裁判所

扶養の順位の決定に関するもの

・・・相手方の住所地の家庭裁判所

遺産の分割に関するもの

・・・相続開始地(被相続人の住所地)の家庭裁判所

寄与分に関するもの

・・・遺産分割事件の係属する家庭裁判所

※1 上記のほか,当事者が合意で定める家庭裁判所も,審判の申立てをする場合の管轄裁判所となります。
※2 調停の申立てをする場合の管轄裁判所は,相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所となります。

3 調停だけで取り扱われる事件(申立ての手数料1件1200円)

1,2の事件を除く一切の家事事件(離婚,離縁など)

・・・相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所

 (平成25年9月 最高裁判所)

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