Q26 年金分割の按分割合の変更

私は、会社経営をしてきて、妻は専業主婦です。私の才覚でかなり稼いできたので、年金の分割は7対3の割合にしたいのですが可能でしょうか?

A26 合意分割の場合は可能と言えなくはありませんが、裁判手続きに拠られた場合、年金分割の割合は原則として0.5(50対50)であることが実務上確定しているため、それを下回る割合とするには特段の事情が必要です。

また、3号分割による場合は、按分割合は0.5と決まっていますので、それを下回る割合とすることはできません。

(年金分割に関する概要は、「Q22 離婚に伴う年金分割とその手続き」で説明していますので、ぜひそちらをご参照ください。)

1.離婚に伴う年金分割の「位置付け」

離婚に伴う年金分割は、婚姻期間中に形成された財産は夫婦の共有物夫婦共有財産)であるとみなし、被用者年金の納付実績もその一種であるというところから認められているものです。

被用者年金等の年金給付は、「夫婦双方の老後等の為の生活保障」という社会保障的な意義を有しています。すなわち、婚姻期間中の被用者年金の保険料納付は、互いの協力により、お互いの老後等のための生活保障を同等レベルに形成していくという意味合いがあります。ですから、年金分割は財産分与の一種でありながらも、社会保障的意義も併せ持っていることから、夫婦間の相互扶助義務にも照らし、より平等であるべきと考えられます

2.制度と照らし合わせて

年金分割の請求方法には、大きく分けて「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

(1)合意分割

合意分割は、当事者双方の合意に基づいて按分割合等を決定する方法です。合意の方法は、更に、当事者間で直接決定する方法と、裁判手続きによる方法とがあります。

当事者間で直接決定する場合には、お互い(特に0.5を下回る方)が0.5未満の按分割合に合意するのであれば実現は可能です。しかし、裁判手続きによる場合は、按分割合は0.5であることが実務上確定しているため、それを下回る割合とするには特段の事情が必要です。「婚姻期間中に形成された財産が夫婦の共有物である」という前提及び夫婦間の相互扶助義務に照らすと、「自分が専ら稼いできたのだから」という理由では、按分割合の変更は厳しいでしょう。「特段の事情」というのは、単に別居しているだけではなく、長期間の別居が継続している上に経済的な依存関係もないような場合において、共有財産への一方の寄与の程度が低いとみなされるような場合に限ります。

(2)3号分割

3号分割は、当事者の一方が国民年金の第3号被保険者である場合(例えば被用者年金に加入する夫の扶養に妻が入っているような場合)に適用される年金分割です。Qのような場合、妻が夫の扶養に入っていることはほぼ濃厚かと思いますが、3号分割については、当事者一方が年金事務所に分割の請求をすることができ、按分割合は一律0.5となります。つまり、夫の意思は関係なく、妻のみの意思で請求でも分割が可能ですので、もはや実現は不可能です

※3号分割の対象となるのは、制度開始日である平成20年4月1日以降の3号被保険者期間となり、平成20年4月1日より前に3号被保険者であった期間については合意分割が必要となります。ただし、既述の通り、按分割合0.5を下回るような分割には、特段の理由が必要であるということをご理解ください。

 

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